●2022年9月、心臓の病気になりました。

 私は、昨年、心臓病になりました。「狭心症」です。狭心症とは何でしょう。

 右の絵を見てください。心臓の病気には大きく分けて2種類あります。

 1つはA.心臓自体」の病気

もう1つは「B.血管(冠動脈=心臓に栄養を供給する)」の病気です。


 B.血管の病気は、「虚血性心疾患(血管がつまって血液がうまく流れない病気)」と呼ばれます。

 さらにそれは、血管の詰まり具合によって

B1「狭心症(心臓の血管が狭くなった)」と

B2「心筋梗塞(血管がつまって栄養不足で心臓が壊死する)」との2つです。

 不幸中の幸いで、私の場合はB1狭心症でした。


 血管がつまる病気で

 A.心臓自体の病気は、A1弁膜症 A2心筋症 A3不整脈 などがあります。

●世界全体の死亡率1位は「脳心血管病」

 右のグラフを見てください。世界全体でも日本でも死因No.1は「脳心血管病=脳/心臓/血管などの血管の病気(cerebrovascular disease)」です。

 血管の病気は、シルバー世代にとって避けることができれば避けたい病気のNo.1と言えるでしょう。

 私たちは、どうしたらそれを避けることができるのでしょうか。そのために、私や周りの人たちの症例を通して、研究を始めたいと思います。


●友人は、知らない間に、脳梗塞になっていた

 右の脳の写真(MRI)は、友人(同級生,67才)のものです。白い点は「脳梗塞の跡(無症候性脳梗塞)」です。ある研究によると「65才以上の3660例のうち28%に認められた」とのことです。

 放置しておくと、「将来、脳梗塞を起こす」「血管性認知症を起こる」可能性があります。高血圧のコントロールを行う、食生活を改善する、などを行う必要があるでしょう。

 みなさんの「脳/心臓/血管」は大丈夫ですか。

●私は、冠動脈がつまった

 私の心臓の動脈(冠動脈)は、2か所でつまっていて、病院で「カテーテル手術」を受けました。


自分で自分の診断です。まず「リスクファクター」を探ります。

しかし「高血圧/肥満/高脂血症/喫煙」などがないのです。

 かんたんに言うと「肥満」でもなく「たばこ」も吸わないのです。いったいなぜ発病したのでしょう。でもそういった人は周辺にもかなりいます。原因がわかれば、多くの人の援助になります。それで「調査・研究」を開始することにしました。

 〈症例〉を見てみましょう。

既往歴:  高血圧(昇圧剤内服により正常血圧にてコントロール中)

     糖尿病予備軍(内服により空腹時血糖,HbAlcは正常範囲内)

     心室性期外収縮 (2020年より)

 (どれもコントロールが取れており、直接の原因とは考えられない)

家族歴: 父 「急性心不全で死去(82才)」

現病歴:   2022年7月頃より左胸部の痛みが生じた。体を動かしている

   ときに出現し、安静にすると消失した。

 

    2022年9月1日、総合病院で検査の結果「狭心症」と診断さ

   れ、入院、カテーテル手術を施行。

    2023年2月現在、健康状態を保っている。

 

 再発を防ぐにはどうしたらいいのでしょう。


●原因が「動脈硬化」であることは間違いない

 「動脈硬化」は、ホースを例にすると、血管が硬くなって弾力性がなくなったり、傷ついたりして、つまりやすくなることです。

 その原因としては、1糖尿病/2高血圧/3高脂血症/4生活習慣(喫煙,肥満など)/5加齢/6遺伝的体質/7ストレスなどが考えられます。

 

 

 

←生活習慣病の原因


●高脂血症とは何か

高脂血症」とは、液中の肪成分の割合が、正常値をれる状のことです。

 脂質(コレステロール,中性脂肪など)は水に溶けないので、直接は体内を運べません。それでタンパク質のカプセルに囲まれて運ばれます。

 主に2種類あって悪玉コレステロールと善玉コレステロールです。

 悪玉は増えすぎると、血管中に蓄積し、動脈硬化の原因になります。

 悪玉は「脂質(コレステロール、中性脂肪)」の割合が高いので、軽い(比重が低い)。

 ⏩コレステロールとは


●なぜ「動脈硬化」→「狭心症」になったか

 もう一度、動脈硬化の原因をあげてみます。

  1糖尿病/2高血圧/3高脂血症/4生活習慣(喫煙,肥満など)/5加齢/6遺伝的体質/7ストレス など

 このうち1糖尿病/2高血圧/3高脂血症は、私は内服薬でコントロールされていました。つまり検査値は正常だったのです。そういう人が「狭心症」になるケースはほとんどありません。では何でしょう。

 私の場合、考えられるのは

   6遺伝的体質(父親が急性心不全で死去)/8加齢

 ぐらいです。でも少し待ってください。「など」があります。

●「など」が残っている。新仮説を立てる。

 いったい私の「狭心症」を起こした犯人は何なのでしょう。考えられる要因は、ほぼ消えてしまいました。でも少し待ってください。「など」があるのです。ほとんどの病気は、複合要因によって起こります。考えられる要因を洗い出して、仮説を立ててみます。

[仮説1]   「糖化」→糖分の摂りすぎで、余分が変化して、血管内にこびりつく。

[仮説2]    体そのものが固くなっている。血管も固くなっている。

●いちばん考えられる「糖化」を追ってみる(仮説1)

 「糖化」とは、余分な糖がタンパク質や脂質と結合してAGE(糖化最終生成物)になることで、ちょうど「ホットケーキがキツネ色に焦げる」のようなものです。このAGEが血管につまるのです。

 「糖分を余分にとっているか」を調べてみることにしました。「持続血糖モニター」という機器があります。24時間、血糖値測定ができるのです。「フリースタイルリブレ」です。それを彼につけてもらうことにしました。

 右は⏩「Abbott フリースタイルリブレ」Amazonで、12,900円

 

 特に問題なのは、食後1〜2時間後に血糖値が急上昇するという現象で「血糖値スパイク」といいます。これはふつうの検査(空腹時血糖 、HbA1cなど)ではチェックできません。


 私は、甘いものが大好きで、食後必ず甘いものを食べている、と言います。これが原因ではないか。つまり、「1食後の糖分取りすぎ」→「2血糖値スパイク」→「3糖化でAGEがたまる」→「臓の血管がくなる=狭心症」

 になったのではないか。

 


●「持続血糖モニター」で測定してみた

 上は私の「24時間血糖値モニター」の結果です。いくつか「スパイク」が見られます。

 それは「食後すぐに動く」と抑えられるとのことです。

 ただ、本当に私の「狭心症」が「血糖値スパイク」が原因だったかどうかは、まだわかりません。いずれにしても、遺伝的要因も心配なので、随時、検査を行なっていきたいと思います。

●仮説2「体が固い」と「血管も固くなる」?

 「体が硬くなっている中高年では、動脈硬化の傾向が強くなる」という研究が発表されています。(「国立健康栄養研究所などの研究グループ」による)

(Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2009; 297: 1314-1318.)⏩日研グッディ「体は本当に柔らかくなる?」


●「生活習慣」を直していくしかない

 今まで、忙しさのあまり、自分の健康をないがしろにしてきた気がします。「糖分取りすぎ」「体が固い」だけでなく、生活習慣全般を見直さなければなりません。

 今回、まさか自分が「狭心症」になるとは想像していなかったので、とてもびっくりしました。ただ冷静に考えてみると、上に書いたように「思い当たる」こともあり、「納得」しました。まだまだ、医学では分かっていないことが多いのかなとも思いました。いろいろ調べたり「空想」したり、久しぶりに「勉強」しました。その点は「狭心症になって良かった」のかもしれません。この研究は、今後も続けていきたいです。

●「糖尿病」の問題

 糖尿病患者はどのくらいいるでしょう。2016年の厚生労働省の調査によると、総人口の15%を越える約2000万人の糖尿病患者とその予備軍が存在すると推計されています。

 では「血糖値スパイク」が生じている可能性がある日本人の数はどれくらい存在しているでしょうか。

ア. 100万人くらい

イ. 200万人くらい

ウ. 1000万人くらい

エ. 1500万人くらい

オ. もっと多い

〈解説〉

「血糖値スパイク」が生じている日本人の数は、1400万人以上と推定されています。「日本人の9人に1人」ということになります。「血糖値スパイク」は、まだ一般には知られていませんが、今後大きな問題になる可能性があると思います。

●健康寿命と人生

 右のグラフを見てください。これは「健康寿命」と「残りの人生」とを表しています。「健康寿命」とは、何も病気もなく過ごすことができる年齢です。平均で男70才,女74才になると、何らかの病気を抱えることになる、ということです。

 「健康」でなくなる原因は、下の円グラフです。多いのは「認知症(アルツハイマーなど)」「脳血管疾病(脳梗塞など)」です。「心臓病」「糖尿病」も1割くらいになります。


●「転ばぬ先のつえ」

 どうしたら健康で楽しい人生が送れるのでしょう。医師で「生活習慣病」の提唱者である日野原重明(1911-2017)さんは、「健康管理の三種の神器」として、体温計、体重計、血圧計を推奨しています。そして、次のように書いています。

 人間が死ぬ病気の3分の2は、その人がたどった生活習慣によってかかる病気だということがわかっています。.......年齢に関係なく、日頃の生活習慣をどう保つかによって、それは予防できるものなのです。.......遺伝子によって受け継いだものは変えられないにしても、それをある程度コントロールすることはできます。日野原重明『50歳からの生きる技術』朝日出版,2001 pp.38-41

  「72才(健康寿命男女)の壁」「80才/90才の壁」を乗り越えて、「100点(才)の人生」を送れるように、いろいろな方法を、みんなで考えていけると良いです。

●(おまけ) Iさんの「血圧グラフ」です

                できるだけたくさん血圧データを集めてみようと思っています。