⚫︎謎の石鹸アレルギー ー経皮感作ー

 ハチに刺されてアレルギーを起こして亡くなるということを聞かれた人も多いかと思います。そして、ハチに初めて刺された場合は、アレルギーは(普通は)起こらないが、2回目以降に刺された場合が、より危険度が高いということもよくいわれます。

 体に「異物」(例えばハチの毒素とか)が初めて入ってきた時、体内で、「感作」が成立します。これは「免疫細胞」がこの物質を「記憶」して次回、同じものが入ってきた時に、これを排除しようという「準備」のことです。そして次に同じ異物が入ってくると「アレルギー反応」を起こすのです。

 以前は、この感作を成立させる侵入経路としては、「経口」(つまり口から入る)または「経静脈」(つまり血管から直接体内に入る)という2つのルートが主体であると考えられていました。

 感作にはもう1つ「経皮感作」というものがあります。「経皮感作」は以前から知られていた事実ですが、10年ほど前にある事件が発生し、注目されました。その事件とは「茶のしずく石鹸事件」という事件です。これは、「茶のしずく石鹸」で洗顔を行っていた人たちが、重篤な小麦アレルギーを発症したというものです。これは、石鹸に含まれていた小麦粉の分解物が皮膚から浸入して、「感作」が成立し、アレルギーを引き起こしたのです。当時は大きな社会問題となりました。

 アトピー性皮膚炎においても、皮膚から、いろいろな抗原が侵入してアレルギーを悪化させるという考えのもと、研究がなされています。そして皮膚が「荒れて」いると抗原が侵入しやすくなるので、保湿剤で皮膚を保護することが有用であることが分かりました。

 アトピー性皮膚炎でない人でも、必要に応じて保湿剤を使い、皮膚のバリア機能を守ることは大事なことです。