⚫︎皮膚病アラカルト ーちょっとおもしろい話ー

 [左手の法則]

 理科の授業で「左手の法則」というのがありましたが、それとは全く違うものです。 この法則とは「右利きの人で、左手だけに皮膚病が出ていたら、真菌症(水虫などのこと) であることが多いというものです。 普通右利きの人は、右手をよく使うので、いろいろな刺激は右手に作用し、右手にかぶれなどの症状が出ることが多いのです。 だから左手だけに皮膚病が出ていたら、外部からの刺激によるものは考えにくいです。 そして皮膚を検査すると水虫の菌(カビ)が発見されることが多いのです。 この法則は、教科書とかには載っていないことが多いですが、結構当たります。 我々皮膚科医ではよく知られています。 (もちろん例外もあります。例えば、左手でニンニクを押さえて右手の包丁で切るという 仕事の人に、左手の親指と人差し指だけにかぶれがあったという例もありました。) 

 

[線香アレルギー]

 線香には、香料とかつなぎ物質とかいろいろな化学物質が含まれています。 このため、お仏壇に線香をあげていると、皮膚にかゆみやじんましんが出ることがあります。皮膚以外でもくしゃみや咳がでる人もいます。意外なアレルギーです。 

[ポケットのコイン]

 太ももにかゆい皮膚病が出たというひとがいました。よく聞いてみるとその人は、ズボンのポケットにコインを裸のまま入れていたそうです。 それをやめたら、皮膚病が治りました。コインによる金属アレルギーだと考えられます。 同じようなことですが「ランドセル皮膚炎」というものもあります。これはランドセルがあたる肩の部分に皮疹が出るものです。 皮膚科医は皮疹が出ている部位(片方だけなのか、両方なのかもふくめて)を考慮して 原因をかんがえます。 まるで「探偵」のように推理します。それが当たると、とても嬉しいです。

 

[アカツキ病]

 アカツキ病という変わった皮膚病があります。「暁」とかを連想しますが、じつは 「垢付き病」なのです。 これは皮膚を洗わないまま放置したために、垢が皮膚に異常に溜まったものです。 皮膚に黑いカサブタのようなものがついています。 

 オリーブ油で湿らせて拭き取るときれいに治ります。 皮膚を洗うことを怖がって発症することもあります。 思春期の女の子の場合、乳房に触ることを心理的に避けて乳輪部に発症した例もあります。

 

[ガチョウの皮膚様毛包症]

 これは顎などに「ガチョウの皮膚のような」ブツブツができる皮膚病です。 いつも顎に手を付いている習慣の人に見られます。 じつは、正しくは日本語の病名にはなっていなくて 

「traumatic anserine folliculosis」という病名で(日本でも)報告されています。 (直訳すると、「外因性 ガチョウ様 毛包症」となります。) 

 

[もんた病〜シイタケ皮膚炎]

 もんたとは「みのもんた」のことです。 だいぶ前ですが、彼の司会するテレビ番組で「干しシイタケの戻し汁を飲むと血液がきれいになる」という情報が流れました。そのあと、あちこちの皮膚科で「シイタケ皮膚炎」(体にかゆい皮疹がでて、手でひっかいたような線状の皮疹が見られます)の患者さんが認められました。 放送後にテレビ局に苦情が殺到し、注意喚起のコメントが発表されたそうです。

 なお、乾燥したシイタケを煮たり焼いたりして食べても、もちろん、大丈夫です。