⚫︎化粧品は皮膚の奥まで届くの ー経皮吸収の話ー  2020.5.9

 多くの皆さん、とくに、女性の方は毎日化粧品を顔や手などに塗っていると思います。

 化粧品の中には「ヒアルロン酸配合」とか「コラーゲン配合」とか表示されているものがあります。ヒアルロン酸やコラーゲンとか聞くと、皮膚が「若返る」ようなイメージを持つ方もいると思います。これらの成分は皮膚の奥まで入ることはできるのでしょうか?その前に、皮膚の構造について説明します。

皮膚は次のように3つの層からできています。 

  1.表皮 

  2.真皮 

   3.皮下組織      そして、付属器として、毛嚢と汗腺があります。

 表皮は0.10.3ミリの厚さがあります。

⚫︎表皮の一番上の層は角質層という層です。ケラチンという物質を含んでいて、外部からの異物の侵入を防いでいます。セロテープで皮膚を5回ぐらい貼ったりはがしたりするとこの角質がとれて、いろいろな物質が入りやすくなります。

⚫︎真皮は0.32.4ミリの厚さがあります。血管や弾性繊維、膠原繊維などがあります。弾性繊維が紫外線で破壊されると、皮膚は弾力を失いシワができます。

 皮膚が「若返る」ためにはこの真皮まで薬剤が入る必要があります。

⚫︎皮下組織はいわゆる「皮下脂肪」です。

 皮膚が吸収できる物質は分子量が500以下(毛嚢や汗腺からは分子量が1000以下)のものに限られます。ヒアルロン酸やコラーゲンは分子量が10万以上ありますので皮膚の真皮までは入れません。

せいぜい表皮までです。

 ですから、これらの化粧品で「若返る」ことはできません。

 ただし、表皮において、「保湿作用」の働きは期待できます。

このように、「皮膚の奥」まで有効成分を入れることは難しいのです。

でも逆に言えば、有害な物が侵入できないような仕組みになっているのです。

(注射で薬品を打ち込むことはもちろんできます。実際美容皮膚科で行われています。)

結局、「化粧品で若返ることは、むずかしい」といっていいでしょう。

 では、どうすればいいのでしょう。

⚫︎皮膚を若々しく保つには

1. 皮膚を清潔にすること

 基本中の基本です。皮膚が汚れていると、毛穴が詰まります。毛穴からは皮脂が分泌されています。毛穴が詰まっていると、皮脂が分泌されません。皮脂は一番の「保湿剤」です。これがないと皮膚の乾燥を招きます。

 また毛穴が詰まると、「ニキビ」や「毛嚢炎」が生じます。ただし、皮膚をこすりすぎることは良くありません。こすりすぎると色素沈着が生じます。また角質のところで述べたように、角質を剥がし過ぎると、外来物質が侵入して皮膚に悪影響をあたえます。ゴシゴシこすらずに軽く叩くように洗うのが良いです

 また皮膚には常在細菌叢があり皮膚を弱酸性に保ち有害な菌が増殖しにくくしています。洗顔をしすぎは、この常在細菌叢を失わせ皮膚の保護機能を弱くします。一日に何回も洗顔することは、かえって良くありません。

何事も「ほどほど」が大事です。

2. 保湿をすること 

 皮膚が乾燥すると皮膚のバリア機能が弱くなります。

その結果皮膚がダメージを受け、「老化」の元になります。

 本来、皮膚には皮脂分泌作用がありますが、年齢とともに、分泌が減少します。それを補うために、保湿剤を使用することは大事だと思います。(保湿剤を使用しなくても乾燥しない人は使用しなくていいです。自分の皮脂分泌をかえって弱めてしまうかも知れないからです。)

3. 紫外線を防ぐこと

 紫外線は皮膚の老化を促進します。外出時には、帽子や日傘などで紫外線を防ぐことも重要です。サンスクリーンも自分に合ったものを使用してください。もし可能ならば23時間おきに塗り直すといいです。

4.  バランスの取れた食事をすること

 実はこれが一番大事なことかもしれません。○○ダイエットとか流行したりしますが、皮膚のためには(たぶん体のためにも)バランスの取れた食事、つまり、肉も野菜も魚も炭水化物も、、、、、、一つに偏ることなく食べることが大事だと思います。

 あと、くよくよ悩まずに生活するとかも、大事だとおもいます。

 最後は「世間話」みたいになりました。