⚫︎「いい加減な」治療 ーホメオパシーについてー

 世の中には「トンデモ」科学というものがあります。 これは科学的根拠がまったくないにも関わらず、「科学っぽい」理論を持つたものです。

 「ホメオパシー療法」もそのひとつです。19 世紀のドイツ人の医師ハーネマンによって始められた療法です。その原理は「類似の法則」といわれています。 それは「健常者に特定の症状を起こす物質には、それと類似した症状を呈する病者を治す効力がある」そしてその特徴的な点は「無限小の法則」です。 これはある薬剤を希釈していけばいくほど病気の治療効果が高くなるというものです。 

 これは普通信じられないことですが、ホメオパシーの理論ではそうなるというのです。

 

ザムエル・ハーネマン(1755-1843)の銅像  wikipediaより


 一方、「プラシーボ効果」(偽薬効果)というものがあります。 例えば、「この薬は飲むと心が安定してぐっすり眠れますよ」と言って 「偽薬」(なにも有効成分が入っていない錠剤)を渡すと、かなり多くの人が 「おかげさまでよく眠ることができました」という「効果」のことです。 「ホメオパシー療法」がもしも「有効性」があるとするならば、この「プラシーボ効果」 がそのメカニズムのひとつとして考えられます。 アンドルーワイルは自分自身の病気が「ホメオパシー療法」によって治ったことより 「ホメオパシー療法」に興味を持ち「ホメオパシー療法」に関する著書を記しました。 その中で次のように述べています。( 出 典 ; ア ン ド ル ー ワ イ ル 著 / 上 野 圭 一 訳 ;「 人 は な ぜ 治 る の か 」 , 日 本 教 文 社 , 1 9 9 3 年 , p 2 9 2 ) 

 「プラシーボ効果は体内から起きる自然な治癒力である。この治癒力をうまく 生じさせるようにすることが治療家の能力である」

 「あの先生に診てもらうと、それだけで何か治った気がする」という言葉があります。 私はとてもそんな医師にはなれませんが、最近(になってやっと)気がついたことは 「皮膚病は(他の病気でもそうでしょうが)かなり自然治癒することが多い」ということ です。「徹底的に」薬で治すよりも「いい加減(良い加減)」に薬で治し、そのあとは 自然に治るのを待つというのもいい方法だなあ」と感じています。 

 

<付記 1> 日本医学会および日本学術会議は「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されている」との見解を表明しています。 

 

<付記 2> 少し古い話ですがホメオパシーにまつわる奇怪な事態が米国で起きたとのことです。 (出典;ロバート・L.パーク著/栗木さつき訳:「私たちはなぜ科学だまされるのか」  

 それはニコチン味の禁煙用のチューイングガムの話です。 「ニコレット」の製造元であるスミスクライン社は、販売前に大量の臨床試験を行い効能を立証するように強いられました。 一方、ドラッグストアで販売されている禁煙用ガムの「シグアレスト」は 臨床試験をまったく受けておらず、効能は一切立証されていません。 その理由は、製造元が「これはホメオパシーだ。」と主張したからとのことです。 (出典;ロバート L.パーク著/栗木さつき訳:「私たちはなぜ科学だまされるのか」, 主婦の友社,2001 年,p119-120) 

そういえば、以前日本でスポーツ新聞が芸能人のスキャンダルを報じ、それが 「ニセ記事」だと訴えられた時、被告の新聞社は「うちの新聞の記事をまともに 信じる読者はあまりいませんよ」と言ったとか???