⚫︎新薬開発のパラドックス――シンプソンのパラドックス――

 「確率」の問題は「直感」に反することがしばしばあります。

こんな話がありました。

「20XX年D製薬会社はナロコ病の新薬X(ねこミン)を開発した。そこで、これまでの製品Y(いぬポン)よりもX(ねこミン)のほうが効き目があるかどうか調査することになった」

 「病院A」「病院B」とが、どちらがよく効くかを調べたら、次のような結果になりました。


A病院

[ねこミン] 

  63人中、25人(39.6%)に効果。💮

[いぬポン]

 31人中、12人(38.7%)に効果。🔺

    ↓

 [ねこミン]の勝ち! 

B病院

[ねこミン] 

  49人中、37人(75.5%)に効果。💮

[いぬポン]

 85人中、61人(71.7%)に効果。🔺

    ↓

 [ねこミン]の勝ち! 


   以上から、「「ねこミン]の方が[いぬポン]より、よく効く」と言えそうです。

[問題]

  上のような実験結果から、本当に「[ねこミン]の方が[いぬポン]より、よく効く」と言っていいのでしょうか。

  ア. 「[ねこミン]の方がよく効く」と言っていい

  イ.   「[ねこミン]の方がよく効く」とは言えない 

 

 データを合算してみます。

[ねこミン]と[いぬポン]の効果を比べてみたら

                          上のグラフのようになりました。

   X[ねこミン]:  62/112=55.5%

   Y[いぬポン]: 73/116=62.9%

 なんとX[ねこミン]よりもY[いぬポン]のほうが効果が高いという結果になったのです。

 

このような例は「シンプソンのパラドックス」と言われます。足し算したら結果が「逆転」してしまうという「直感」に反する事態もありえるのです。

 

本当に世の中、何が起きるか分かりません。

(「例」のお話はすべて私の創作です。実在の会社、病院などは一切関係ありません。)

 

 <参考文献>谷岡一郎(2001)『確率・統計であばくギャンブルのからくり』講談社 pp.34-36

 

●[追加] 「四大工業地帯」のふしぎ

 下のグラフを見てください。これは松崎重広『社会を見直すメガネ』(国土社,1985)からです。

「金属工業」といえば、....................「北九州工業地帯」

 いやいや、ちょっと待ってください。京浜工業地帯は「総額」がすごく多いです。

下は、グラフを書き直したものです。「量率グラフ」です。

 「パーセント」というのは、気をつけないといけません。