⚫︎18 自己免疫疾患 ー免疫あれこれー

 私たちの体には免疫細胞や抗体という「防衛軍」があり「外敵」(例えばウイルスや細菌)が入ってくると、戦って排除します。そして「防衛軍」は自分の細胞には反応しないような仕組みになっています。ところがどういうわけか、自分の細胞に間違えて攻撃をしてしまうことがあります。これを自己免疫疾患といいます。自己免疫疾患には様々なものがあります。

 

「全身性エリテマトーデス」

 この病気は女性に多い病気です。15歳から65歳までに多く起こります。原因は不明ですが、発症や悪化の誘因となるのは紫外線、寒冷、妊娠、ストレスなどです。全身の臓器に障害がでることが特徴です。関節や皮膚そして腎臓や肺などの内臓にも障害がでます。血液中に「抗核抗体」というものができます。これは自分の細胞の核の中にあるDNAやタンパク質に反応してしまう自己抗体です。この抗体が体のあちこちで反応を起こします。その結果全身の至る所で障害を与えるのです。

 治療としては免疫を抑える薬を使います。特にステロイド剤はよく用いられます。場合によっては免疫抑制剤を使うこともあります。

 

天庖瘡

 皮膚や口腔粘膜などに水泡やびらんを生じる病気です。食道の粘膜に生じることもあります。皮膚や粘膜の細胞はお互いに離れないようにデスモグレインというタンパク質で接着されています。このデスモグレインに対する自己抗体が作られてしまい、接着ができなくなります。その結果水泡やびらんが出来てしまいます。なぜ、自己抗体が出来てしまうのかは不明です。

 全身性エリテマトーデスと違う点は、皮膚や粘膜だけに障害が出るということです。腎臓などには障害を与えません。

 自己抗体の攻撃目標が限定されているのです。治療としては、ステロイド剤が主に使われます。ほかに免疫抑制剤や血漿交換療法が行われる場合もあります。

 

リンゴ病

 リンゴ病とは「伝染性紅斑」という病気のことです。頬がリンゴのように赤くなることからこのように呼ばれています。原因はヒトパルボウイルスというウイルスです。血液検査で時々、「抗核抗体」が見つかることもあります。また顔が赤くなったり、関節が痛くなる人もいます。全身性エリテマトーデスに似た症状を呈しますが、普通は自然に治癒します。

 

コロナ治療とステロイド

 普通ステロイド剤は免疫を抑えることから、ウイルス性疾患には使わないことが原則でした(免疫が弱くなるとウイルスが増えてしまうから)。ところが今回の新型コロナ感染の肺炎の治療にはステロイド剤が使用されるケースがありました。コロナウイルスに対する免疫反応が「暴走」してしまい、重症の肺炎を起こしてしまったのです。それを抑えるためにステロイド剤が投与されました。このように免疫反応は「害」になってしまうこともあります。(自己免疫疾患も免疫が「害」になってしまう例です)「ほどほど」が大事です。(花粉症も花粉に対して異常に反応することが原因です)

 

「みずむし」は「かぶれ」である???

 「みずむし」は真菌という「カビ」が皮膚に付いて繁殖した病気です。皮膚にかゆいブツブツやただれなどを生じます。原因が「カビ」だから治すには「カビ」を殺せばいいわけです。

 ところが、「カビ」を殺す薬を塗っても治らないし、場合によっては悪化することもあります。そこで「ステロイド剤」の登場です。ステロイド剤は「カビ」を増やす可能性があるにも関わらずとてもよく効く場合があります。「みずむし」の症状は「カビ」の出す「毒素」に対して皮膚が反応を起こしていると考えられます。この反応を抑えるのが「ステロイド剤」です。このことに注目して昔、ある医師は「みずむしは感染症というよりむしろカブレだ」と言ったとか????(もちろん多くの「みずむし」はステロイド剤なしで治療できます。ここで述べたことはむしろ例外的なことです)