⚫︎17 ニワトリが先か、タマゴが先か ーアレルギーと感作ー

 蜂に刺されてアレルギーを起こして亡くなったということは耳にされたことがあると思います。そして、初めて蜂に刺された時には大丈夫でも、二回目以降刺されると危険であるということもご存じのかたも多いと思います。

 アレルギーというものは、初めて体の中に「異物」が入って来たときは、大丈夫なのですが、二回目に同じ「異物」が入って来ると反応を起こすのです。例えば、蜂の毒素が入って来ると、からだのなかの、免疫細胞が「ドロボウが入って来たぞ」

 「犯人はこういう顔だぞ」という「指名手配書」を作ります。次に、同じ蜂の毒素が入って来ると、「指名手配書」と同じ顔だ、ということになって体の中の「警察官」が攻撃して排除します。この時に起きる反応が「アレルギー反応」なのです。この反応が、必要以上に強いと、命に関わることになるのです。「指名手配書」ができることを「感作」が成立したと言います。例えば、「蜂の毒素に対して感作が成立した」というふうに言います。

 さて、「ドロボウ」の侵入場所ですが、「玄関」や「裏口」や「窓」などがあります。同じように「異物の侵入経路」もいろいろあります。例えば、口から入る、空気に乗って鼻から入る、血管から入るなどがあります。最近注目されているのは「皮膚から入る」経路です。(これを「経皮感作」といいます)

 つまり、タマゴを一回も食べてない赤ちゃんでも、皮膚にタマゴの成分が付くと、「タマゴアレルギー」になってしまうのです。

 

 ではどのようにして「タマゴアレルギー」になってしまうのでしょうか?順に説明します。まず一般の家庭のホコリには、タマゴの成分が多く含まれています。そしてホコリとして、空気中に漂っています。このホコリが赤ちゃんの皮膚に付きます。この時、正常な皮膚からは、なかなかタマゴの成分は入れません。しかし、もしも、皮膚が乾燥してカサカサしていたり、引っかいたりしてキズができていたりすると、タマゴの成分が皮膚から浸入します。侵入した後「指名手配書」が出来ます。そのあとで、タマゴを食べると「指名手配書」を見て「警察官」が反応を起こします。皮膚がかゆくなったり、じんましんが出たりします。つまり「タマゴアレルギー」になってしまったのです。

 つまり皮膚が元々荒れていることが、先なのです。タマゴアレルギーはその後で起きるのです。「タマゴアレルギー」が起きて皮膚病になる訳ではないのです。以前は「タマゴアレルギー」の予防のために、お母さんがタマゴを食べないで授乳したりしていましたが、それよりも大事なことは、皮膚を荒れさせないように、保湿剤を塗ることなのです。

 「皮膚あれ」が「たまごあれるぎー」よりも「先」でした。お後がよろしいようで。

(*すべての「タマゴアレルギー」が皮膚からの侵入が原因であるというわけではなく、たとえ皮膚が正常であったとしても、タマゴを「食べて」腸からタマゴが侵入したために「指名手配書」ができてしまうこともあります。)