板倉さんが「はみだしたの」に投稿した文

(創刊0号~125号まで)

 

編集=水口民夫(2022.3)

 

●1「教師の書いたものを見ると文献の表示法が素人ぽい。これは一般の慣用に従うといい。

文献で一番大切なのは書名でなくて著者・筆者名です。だから著者名は一番前に書く。書名。これは必ず『  』の中に入れる。こうすると文章の斜め読みするとき便利です。論文・記事名は「   」の中にいれ,雑誌・編著者名はそのあと『   』の中にいれて表示する。

要するに,図書館や本屋さんでそういう題名の本や雑誌をさがせば見つかるのが『   』。ページは「頁。p,pp」などと書く人がいるが,これは「5ぺ」などと表示するといい。」

(『たのしい授業』1983年9月号No,6)

 

●2「怪(け)しからぬ」とは「怪(あや)しくない」ということだが,「けしからぬ奴」とは?

 辞書をひくと,日本語ではときどき否定形が肯定文と同じ意味をもつことがあるという。

 「とんでもない奴」は「とんだ奴」の否定形だが,同じ意味。なぜ否定形が肯定と同じ?

 謎解きの試み。若い女性たちはよく,合づちをうつ時,「ホント?」「ホントー!」という。ところが最近は「ウソッ!」「ウソーッ」という人がふえた。ホントにウソ?

 話をきいて「ホント」と疑い,「ウソーッ」と叫ぶなんて,考えてみれば失礼な話。しかしこれ,話し手に対する最大の感激の意の表現。当り前な話はきいても退屈なだけ。一番たのしい話は,とてもホントと思えない,ウソとしか思えないようなホントの話。

 「あなたの話,たのしいわ。私,ワクワク感動してきいています」と言ってるわけ。もしかすると,現代女性の大先輩・紫式部や清少納言たちも,当り前な話にうんざり!?そこで,怪しくない,つまらない話をする人を「怪しからぬ人」と軽蔑したのかも。

(『たのしい授業』1983年10月号 No.7)

 

●3 新案原子記号の覚え方

 キンは英語でGoldなのに原子記号がAuなのはなぜ?

 金は何ものにも侵されず,永遠に光を失わない。まさに金属の英雄(A-U)だからさ。

 それなら銀はなぜAg? 銀も貴金属だがA雄には及ばなない。せいぜいA good。

 では銅のCuは? 銅はさらにおちる。A雄どころかB雄でもなく,C雄というところ。

 なら鉄はなぜFe ?鉄はフェライト(Ferrite,磁鉄鉱)の主要成分なんだ。

 亜鉛のZnは? 亜鉛は電池の-極。+極から出た電流の終著点。だからzでゼットン。

 スズがSnという訳は? 東北弁でスズがスンズと聞こえたんだろうね。そこでSunzu。

 水素は何故Hなの? そりゃ簡単さ,水の化学式はH20だろ。その主成分だからHなの。

 そうか,わかった。水銀がHgなのは,水のHのあとにギンginのgをつけたわけね。

 酸素のOはなぜかし一ら? 酸素は英語でオキシジェンOxygenというの。だかO2。

 それならNはなぜ窒素? 空気が窒素ばかりになったら生物は窒息しちゃうからNon!

 ケイ素のSiは? ケイ素ってシリコンのことでしよ。ナウい人はSiliconっていうの。

 そうか!白金だってプラチナPIatinaというほうがナウいものね。そう,だからPt。

 学のあるところを示すと,タングステンはウォルフラムwolframともいうからW。

 塩素のClは? 塩素はChlorine。麻酔薬のクロロホルムというのはCHCl3です。

 リンのP,硫黄のS,ヒ素のAs,臭素のBr,アンチモンのSb,鉛のPb,誰か考えて。

(『たのしい授業』1983年11月号 No8)

 

●4 地球の1000万分の1の模型,直径130cmの風船球では,海水の量はどれくらいある?

ア.1㎤ぐらい以下

イ.ほぼ10㎤

ウ.ほぼ100㎤

エ.1リットルぐらい(以下)

 

答え

海の深さは平均4000m,1000万分の1にすると0.04cm=0.4mm。風船の表面積は4×π×(半径)2で計算すると,約5,3000cm2.海はその7割だから,×0.7x0.04cm=1484cm3つまり約1.5リツトルが正答。

それを直径130cmの球にうすくのばすと海!?

(『たのしい授業』1983年12月号 No.9)

 

●5 動植鉱物名はいまカタカナで書くきまりになっているが,一度は漢字で書くといい。

 アサガオは朝顔,ダイコンは大根,モンシロチョウは紋白蝶,スイショウは水晶とかく。

 そんなこと教えるまでもないことだと思うと案外さにあらず。感心する子どもも多いよ。

 ハツカダイコンは二十日大根。種をまいて20日ぐらいで収穫できるから二十日大根なの。

 アンザンガンは昔は安山岩と書いた。アン山とはアンデス山のこと。アンデス山岩です。

 明治の先覚者は安山岩のことを富士岩とよんだ。富士山にもみられる火山岩だからです。

 チョウセキは長石,キセキは輝石,セキエイは石英。これはひいでた石という意味です。

 漢字で書くと親しめるものがけっこう多い。かなもじの方がわかりやすいとは限らない。

 しかし,タンポポのことを蒲公英と書く等は愚の骨頂。蒲公英は中国語で日本語でない。

 チョウ石ってどんな石?社長石ではありません。斜長いしでもなくて斜長石です。

 カリチョウ石は仮長石ではなくて,カリ長石,つまりカリウム長石のこと。キ石は輝石。

 とくに鉱物名は,カタカナにしたために何がなんだかわからなくなったものがおおい。

(『たのしい授業』1984年1月号 No.10)

 

●6 二宮尊徳金次郎の「大数現量鏡」という文章は大きな数の量的イメージを表すくふう。

 一辺1分(3mm)四方の立方体を1寸(3cm)四方に敷きつめて板状にするとその数は100個。

 板状にした立方体を10枚積み重ねると(100×10で1000個)一辺が1寸の立方体。

 その一辺1寸の立方体を1尺四方に敷きつめて板状にすると,一辺1分の立方体10万個。それをさらに10枚積み重ねると一辺1尺の立方体で一辺1分の立方体が100万個含まる。

 それをさらに100個敷きつめると,・・・・あなたなら何回ぐらい繰り返しますか?

 金次郎は6回繰り返して100京個の立方体を組み重ねるところでやめたりはしない。

 15回繰り返すと10載個となるが,それでもまだ根気よく図を書きつづけて説明を続ける。

 22回繰り返すと100不可思議。それでもまだやめないのはさすがに二宮金次郎。勤勉です。

  金次郎は同じ図をなんと25回も繰り返し書き続け10の75乗=100大数に達するのです。

(『たのしい授業』1984年5月号 No.14)

 

●7 上下の感覚は案外いいかげんなもの。

  急上昇中の飛行機内でコインを落として手で受けるとずいぶん狂う。紐を吊り下げると「こっちが真下なのか」とびっくりさせられる。

(『たのしい授業』1984年9月号 No.18)

 

●8 教科書統制に着手1880(明治13)年

 明治初年自由主義的だった文部省が教科書統制に着手したのは1880(明治13)年のこと。士族の反乱が西南戦争で終った後,さかんになった自由民権運動に対処するためだった。

 そこでまず文部省は,世界の国々にはいろいろな政体の国があることを記した教科書の使用を禁止した。「君主国のほかに共和国という国がある」と記してあるだけで使用禁止。「共和国の方がいい」と書いてなくても選択肢が見えること自体が危険思想というわけ。

 世界の国々に目を開くと,いろいろな可能性と社会問題のむずかしさとが見えてくる。

(『たのしい授業』1984年10月号 No.19)

 

●9 5000円札に新登場のニトベイナゾウってどんな人か,子どもに聞かれたらどうする?

 新渡戸稲造は,国連の前身=国際連盟の事務局次長を1919年から足かけ10年つとめた人。だから少しは外国にも知られているので,外国人向けを意識して5000円札に登場させた。

 それに,新渡戸は1899年に英語で『武士道一日本の魂』という本を書いたクリスチャン。内村鑑三と同窓の札幌農学校出身で,農業経済学専攻。東京女子大校長もやっている。

(『たのしい授業』1985年4月号 No.25)

 

●10 『植物図鑑逆語辞典』なるものがある。

この辞典でアオイでおわる植物名は14種ある。ホテイアオイ(布袋葵)にはじまり,マルバカンアオイ(丸葉寒葵)まで,何科の植物?

アオイ科の植物は5種,ミズアオイ科2種で,あとはウマノスズクサ科4種,アオギリ科1種,フウロウソウ科2種。

アオイという名がついていてもアオイ科とは限らないのです。

植物名を逆に呼んでアイウエオ順にならべると,そういうこともわかって色々便利です。

この本,腰折学会(ドロイヤル)発行なのですが,現在は新版を作成中ということです。新版は,秋頃に発行の予定です。

(『たのしい授業』1985年5月号 No.26)

 

●11 三省堂から出た中村敬編の『ファースト英和辞典』は新しい辞典として注目に値する。

 まず見出し語が親切。is,was,have,hasは勿論,規則動詞の過去形や複数形も,中学校の教科書に出てくるものは全部見出し語に。acceptのほか,accepted,acceptsも見出し語になっているというわけ。英語ができる人には無用な親切だが,ドイツ語・ロシア語・ラテン語などを学び始めると,この有り難さがわかるというもの。

 見出し語にはカナで発音も書かれている。「カナで本当の発音ができるか」という疑問に対して,「発音記号だって本当の発音を表すことはできない」という。

 各ページに1個所ほどある「はてな?」欄も面白い。例えばcrossesの項には「僕は彼女からの手紙の最後に×印を5つ見つけた」という用例を示したあと,「手紙の×印は何か?」という話を載せている。×-クロス印はキスの印とのこと。小学校の教師も持っているといい。

 (『たのしい授業』1986年7月号 No.41 )

 

●12 日本の県名には県庁所在地の都市名と同じものもあるが違うものもあって覚えにくい。

 鹿児島県の鹿児島,山口県の山口は同じなのに,宮城県の仙台,岩手県の盛岡はちがう。 

 「全部同じにしてくれたら覚え易かったのに」と思えるが,どんな県が同じでどんな県が違うか調べてみると面白い。

-ヒント;じつはこれ,明治維新と関係がある。維新後,薩摩藩とか土佐藩とか呼んでいたのを,全部城下町の名をとって鹿児島藩・高知藩などと呼ぶことにした。そして,廃藩置県後,県庁所在地の都市名と県名とに小細工をした。

 つまり,明治維新のとき官軍側についたところは県名をその県庁所在地名と同じにした。佐幕の藩の城下町が県庁所在地になったところは,わざと都市名と県名とを変えたわけ。

 福島県や青森県・新潟市などは県名と県庁所在地が同じだが,会津若松や弘前.長岡などの佐幕側の藩庁所在地は県郡からはずしている。秋田県の秋田は東北唯一の官軍側の藩。

 庁所在地と県名を見ると,維新のときにその都市がどちらについたかがほぼわかる。

 (『たのしい授業』1987年3月号 No.49)

 

●13「最近の中国人がもっとも親しみを感じている国」は日本

「最近の中国人がもっとも親しみを感じている国」は日本だそうです。日本の次はアメリカで,その次は西ドイツなのだそうです。かつて中国が共同でアメリカと戦った北朝鮮は③位までにも入らないのです。

 それに対して「もっとも嫌いな国」は,ベトナムだそうです。そういえば,。いま中国はベトナムと戦争状態にあるのです。

 その次に嫌いな国の名は言うまでもないようで聞きもらしましたが,たぶんソ連なのでしょう。

 「経済的にもっとも交流が盛んな国」が「親しみを感ずる国」になっているわけですね。

 (『たのしい授業』1987年5月号 No.51)

 

●14 母音「A,I,U,E,0」をアルファベット読みするのは,どんな単語,どんな時?

gate(門),side(側),cute(愛らしい),pate(パテ),cote(コート)など母音十口十Eの時 。

 (『たのしい授業』1987年10月号 No.56)

 

●15 ノーベル賞を受賞した日本人、東大出身者は何人?

先月,マサチューセッツ工科大の利根川進教授が1987年ノーベル医学生理学賞を受賞しましたが,これまでノーベル賞を受賞した日本人の名前をいえますか。湯川秀樹,朝永振一郎,江崎玲於奈(物理学賞),福井謙一(化学賞),川端康成(文学賞),佐藤栄作(平和賞)の各氏です。では,このうち東大卒業者は何名?

 答は2.5人。川端,佐藤,江崎氏は旧制三高出身,つまり教養部だけ京大に在籍したことになるからです。

 (『たのしい授業』1987年11月号 No.57)

 

●16 ユリ・ゲラー氏、金採掘できるか?

 オーストラリアの金鉱山開発会社ザネックス社は,1985年にソロモン諸島で金鉱開発を計画,超能力で有名なユリ・ゲラー氏と契約した。

  同社はゲラー氏が指定したマブ鉱山の3つの地域で開発を進めていたが,期待したほどの成果が得られないうえ,ソロモン諸島政府の課税が厳しく採算が合わず,結局,撤退する方針を決めた。 

  同社がゲラー氏に支払った金額は25万ドル。念力も期待はずれという次第。(『日経産業新聞』1987年12月14日)

(『たのしい授業』1988年2月号 No.60)

 

●17 教科書は和紙から洋紙に

 No,59の本欄(64ぺ)に「教科書が洋紙になったのは明治37(1904)年の国定教科書から」とありましたが,それはまちがいです。国定教科書以前の教科書,たとえば明治33年刊の『小学理科教科書』(棚橋源太郎ほか著,金港堂)は洋紙,洋綴じになっています。ですから,あの文章は「すべての教科の教科書が洋紙になったのは」とすると正しいわけです。

 (『たのしい授業』1988年3月号 No.61)

 

●18 日本一の都市、大阪

昭和4年版の内閣統計局編『列国国勢要覧』を見ると,大阪の方が東京より人口が多くてなっている。ミスプリではないかと思い,「列国大都市の人口」の項を見ると,そこにも何と「大阪は世界第6位の都市/東京は世界第8位の都市」と書いてある。

 日本統計協会の『日本長期統計総覧』(1988年)によると,1920(大正9)年には,東京市の人口217万人,大阪市125万人だったのが,1925(大正14)年には,東京200万人,大阪211万人と逆転。また,1930(昭和5)年には,東京207万人,大阪245万人とあった。「東京は関東大震災のために人口が伸び悩んだ」というのが,その一因。

 しかしもっと大きな原因は大阪は1925年に市街地を拡大したのに,東京が市街地を拡大したのは1932年だったからということ。そこで1935(昭和10)年には,東京市は588万人にふえ,大阪市299万人の約2倍となった。都市の人口というのは,どこまでを市街地にいれるかで大きく変わる。

 例えば,中国の北京市は関東平野全域くらいの広さをもっている。だから,北京市と人口を比べようとするならば,関東6県の人口を加えなければならないということになる。

 (『たのしい授業』1988年4月号 No.63)

 

●19 チョウチョは「菜の葉」?「菜の花」??

「チョウチョ,チョウチョ」と歌う童謡。その後は「菜の葉にとまれ」と続きますが,その歌詞にクレームがついたことがあります。

 「チョウは菜の葉ではなく,菜の花にたわむれるのではないか」というのです。そこで,最初の国定『尋常小学読本』では,「テフ」が「チョー」に変身するとともに,「菜の花にとまれ」と改正されました。

 ところが,明治37年9月の『教育時論」にのった奥原碧雲さんの論によると,昆虫学者曰く「蝶の口は長管をなしているから菜の花の蜜は吸えない。菜の花に来るのはハチで,蝶は菜の葉に卵を生みつけにくるのだ」との話。それでまた「菜の葉にとまれ」となったというわけです。

 この歌は「テフ→チヨー→チョウ」と「葉→花→葉」の変身物語です。 

 (『たのしい授業』1988年6月号 No.65)

 

●20 「卵は塩水に浮く」だけがどうして有名になったか

『科学的とはどういうことか』(板倉聖宣,仮説社)に,「砂糖水でも卵は浮くか」という問題があります。昔から「塩水なら卵が浮く」という実験は有名ですが,砂糖水の実験は知られてないので,この問題は面白いのです。

それにしても何故「塩水の実験」だけが,知られてきたのか。『東洋奇術新報』第1号(1890)にその謎を解く資料を発見しました。

「よい種子を選ぶには,種子を塩水の中に漬けてみて沈む種子を選ぶとよい」という記事,「砂糖を用うるは塩より安全なれども,その値高くして容易に用いがたし」と書いてあるのです。それだけではなく,「水の軽重により種子の浮沈あることを知らんと欲せば,試みに茶碗に水を盛り,鶏卵を入るべし。その鶏卵は必ず沈むものなり。されども,この水に塩を和するときは,その鶏卵は直ちに浮出すべし」ともあります。つまり,この実験は,「塩水による種子選び法」とともに知られるようになったというわけです。

(『たのしい授業』1988年7月号 No.78)

 

21 〈豪・米・英・欧〉の話

 今朝(7月5日)の『朝日新聞』に,「豪の子ら参加,親善柔道大会」という見出しがありました。この〈豪〉の字は何と読むのでしょう。〈強豪〉を略したものでしょうか。その記事の本文には「オーストラリアと都内六区…」とあるので,〈豪=オーストラリア〉とになります。

では,どうして〈豪=オーストラリア〉となるのでしょうか。『角川漢和中辞典』で〈豪〉を引いても〈オーストラリア〉の意味は出ていません。戦前の『大字典』を引いてもありません。やはり,オーストラリアのチームは強豪だから?

 じつは,昔はオーストラリアのことを漢字で〈濠太刺利〉と書き〈濠州〉と略しました。〈豪〉の字は,その〈濠〉の字を簡略にしたものなのです。『角川漢和中辞典』で〈濠〉の字を引いたら,〈濠太刺利=オーストラリア連邦=濠州〉と出ていました。しかし,『大字典』には出ていませんでした。今の人には読めなくても,昔の人は読めたからです。

米国・英国なら,今の人でも読めます。それにしても,どうして〈米国=アメリカ合衆国〉となるのでしょう。米国は〈米の沢山とれる国〉だから?英国は〈英才の多い国〉?昔の人は,イギリスを〈英吉利〉と書きました。そこでその頭文字をとって英国とした。アメリカの場合は,Americanの発音の〈ア〉を聞き落として〈メリケン=米利堅〉国と書いたので〈米利堅国→米国〉となったわけです。

こういう漢字はとても難しく,しかも漢和典を引いても出てこないことが多いので,そのコーチをすることにしましょう。

欧州は〈欧羅巴=ヨーロッパ洲〉を略したもので,東欧=東ヨーロッパ。それならば,①西班牙,②葡萄牙,③佛=仏蘭,④和蘭,⑤白耳義,⑥独獨=独逸,⑦瑞西,⑧瑞典は?

①スペイン,②ポルトガル,③フランス,④オランダ,⑤ベルギー,⑥ドイツ,⑦スイス,⑧スウェーデンが正答です。

そこで〈西領〉と言えばスペイン領のことで,〈葡領〉といえばポルトガル領のことになります。和蘭=オランダは〈和〉と略すと,日本=大和と間違える恐れがあるので〈蘭〉と略し,だから,〈蘭学〉と言えば<オランダ学>のことです。  〈瑞〉を頭文字とする国は〈瑞西,瑞典〉の二か国あるので,スウェーデンのほうは〈典〉と略し,〈瑞〉とあればスイスのことを指すのが普通です。あとは頭文字で略します。

その他の西欧諸国の①丁抹,②芬蘭,③諾威,④墺太利,⑤伊太利,⑥希臘は,①デンマーク,②フィンランド,③ノルウェー,④オーストリア,⑤イタリア,⑥ギリシャです。  ソ連・東欧諸国では,①露西亜,②波蘭,③羅馬尼,④伯爾加里,⑤洪牙利があります。これは,①ロシア,②ポーランド,③ルーマニア,④ブルガリア⑤ハンガリーです。

亜米利加大陸では,加拿太=加那太=カナダ,墨其西哥=メキシコ,玖馬=キューバ,巴拿馬=巴那馬=パナマ,伯西見=伯刺西爾=ブラジル,亜爾然丁=アルゼンチン,秘魯=ペルー,哥倫比亜=コロンビア,智利=チリ。

大洋州の新西蘭の<新>はニューでニュージーランド。これで,よく使われる欧米諸国の漢字名はほぼ尽くしたことになります。

亜細亜と阿弗利加では,①埃及,②土耳其,③波斯,④阿富汗斯坦,⑤印度,⑥錫蘭は,①エジプト,②トルコ,③ペルシャ=イラン.④アフガニスタン,⑤インド,⑥セイロン=スリランカで,また,⑦暹羅,⑧柬蒲塞,⑥緬甸,⑩新嘉坡,⑪比律賓は,⑦シャム=タイ,⑧カンボジア,⑨ミャンマー(ビルマ),シンガポール,⑪フィリピンです。

 昔から有名な都市や地域名にも漢字で書かれる地名があります。まず米国。紐育=ニューヨーク。華盛頓=ワシントン。桑(扶蘭悉斯可)港=サンフランシスコ。布哇=ハワイ。

英国の倫敦=ロンドン,英克倫=イングランド,威耳斯=ウェールズ,蘇格蘭=スコットランド,愛耳蘭=アイルランド。仏国の巴里=パリ,里昂=リヨン。伊の羅馬=ローマ。独国では伯林=ベルリン,普魯士=プロイセン,巴威耳=バイエルン,撒遜=ザクセン,瓦敦堡=ビュルテンベルグ,巴丁=バーデン,漢堡=ハンブルク。墺の維也納=ウィーーン。白の比律悉=ブリュッセル。蘭の海牙=ハーグ。葡の墺門=マカオ。比の呂宋=ルソン。印の孟買=ボンベイ。露の莫斯科=モスクワ,西伯利=シベリヤ,高加索=コーカサス。

以上の地名は,ニュージーランドのニューに<新>の字を宛てたもの以外は,漢字の音をあてたものですが,英国の有名な大学都市名<剣橋>という地名は何と読むと思いますか。<ケンブリッジ>です。ケン(剣)の音に〈ブリッジ=橋〉の字を加えたのです。その剣橋大学に対抗するオックスフォードは,〈ox=牛,ford=浅瀬,津〉なので〈牛津〉です。

これらの地名は,ただの遊びの〈難しい判じもの〉のように思えるかも知れません。しかし,1945年ころまでは広く通用していたのです。もっとも,漢字国でないのに漢字の表記がある国は,明治初年のころすでに独立していた国々に限られています。新しい国名カタカナしかないのです。「漢字国名がある国は19世紀半ばには独立国で,世界にその名を知られていた」と考えて間違いないのです。漢字地名を見たら,「古くから世界に知られていたんだなあ」と思って下さい。漢字地名は1945年ころまでに出版された本を読むときには欠かせません。いまでもその一部が使われているので,知っておくと便利です。

(『たのしい授業』1990年8月号 No.92)

 

●22 中国の原子名

No.113の26ぺ本欄に気(きがまえ)の元素名が出ていましたが.それらも含めて,中国の原子名はすべて『原子とつきあう本』(板倉著,仮説社)の105ページに載っていますよ。気(きがまえ)の原子は気体で,液体はさんずい,金属原子は金(かね)へん(水銀はのぞく),非金属原子で常温で固体のものはすべて石へんというふうになっています。

(『たのしい授業』1992年4月号 No.114)

 

●23 言論の自由,とは何か

 根源的には「真実を言う自由」といってもよい。

 だがしかし,言論の自由抑制者たちはいつも「人々を迷わすウソの自由を認めない」といったものだ。

 ガリレオだって,多数派・主流派にとってのウソを主張したので宗教裁判にかけられた。

 多くの人々にとって,ウソとしか思えないようなことでも自由に言う権利。それが言論の自由の中心と考えなくてはならない。  

寛容の心が言論の自由をはぐくみ育てるのです。

 (『たのしい授業』1992年7月号 No.117)

 

水口民夫が「はみだしの」に投稿した文

●1 安野光雅さんの『算私語録』(朝日新聞社)の中に,こんな問題があります(124ぺ)。

 地球のこれまでの全史を1年と考えて,今現在をあとわずかで1年が終わる頃とします。すると次のできごとは,圧縮された1年のうちの何月ごろ起こったことになるでしょう。

①最初の有機化合物が形成される。

②生命の兆しが見受けられる。

③せきつい動物の出現。

④哺乳類があらわれる。

⑤人類の登場。

⑥人類の歴史文書の記載が始まる。

⑦コロンブスのアメリカ大陸発見。

 あなたの予想は?

答えは

⑤  6月 ②10月初め ③12月の第2週   ④12月24日

⑤除夜の鐘のなる数時間前    ⑥1分前弱    ⑦4秒前

 (『たのしい授業』1989年5月号 No.76)

 

●2 若者の脚気

 『模倣の時代』下巻(板倉聖宣,仮説社)のつけ足しの所に,「近頃,脚気になる人が増えている」という話がありますが,NHKの『きょうの健康』(1989年9月号)にも橋詰直孝さん(帝京大)が「若者に増える脚気」に書いています。脚気を発病する人に,10~20代の男性が圧倒的に多いのが現代の脚気の特徴。また30代以降の中年の人が脚気になる原因には飲酒があげられるとか。アルコールばかり飲んでいると栄養状態が悪化し,ビタミンB1不足から脚気になるとの事。脚気の歴史にもふれてあり参考になります。

 (『たのしい授業』1989年10月号 No.81)

 

●3 「特撰金粒樋屋奇應丸」

〈自由電子が見えたなら〉の授業をしているとき,クラスの女の子,溝端さんが「特撰金粒樋屋奇應丸」をもってきました。見てみると,名前のとおり金色をした丸薬です。

 この「樋屋奇應丸」,電気を通すと思いますか?

実験結果は電気を通しました。

ということは,金がまぶしてあるということですね。仁丹は銀がまぶしてあることは知っていましたが,金がまぶしてある薬があるとは知りませんでした。オドロキ!!

 (『たのしい授業』1990年6月号 No.90)

 

●4「イワシのうろこは銀色」は電気を通すか

イワシのうろこは銀色に光っていますね。では,電気を通すでしょうか?この問題サークルで話題になって,実際に実験してみました。その結果は,とおしませんでした。(ヤッパリ)もしも,うろこが金属だったら,海水でサビてしまいますからネ。

 (『たのしい授業』1991年10月号 No.108)