⚫︎化石から細胞は取り出せるか 西村寿雄  2022.05.09

 生物は細胞からできています。最初に生まれたのは単細胞生物でした。その細胞が分裂して、多細胞生物へ、背骨無し動物へ、そして背骨有り動物へと分裂していきました。

 その生物の細胞内部には細胞核があり核の中にはDNAという遺伝情報があります。その細胞からIPS細胞を見つければ、細胞を分裂させることもできます。

 約12000年前に絶滅したとされるマンモスがシベリアの凍土に埋もれています。そのマンモスの化石が時々見つかることがあります。

【問題1

 あなたは、凍土から現れたマンモスの化石から細胞を取り出すことができると思いますか。

予想  

取り出すことはできる

. 取り出すことはできない

その他

 

 1996年、近畿大学では、見つかったマンモスの化石から細胞や細胞核を取り出す研究に乗り出しました。細胞が取り出せたら細胞核を取り出し、中にあるDNAからIPS細胞を作り、ゾウのお腹を借りて、マンモスを復活させようと言うのです。

 

 近畿大学では、マンモスの化石から細胞を取り出せたでしょうか。また、細胞核は分裂させられたでしょうか。

あなたはどう思いますか。

 

細胞核を取り出す研究

 近畿大学では、他の専門家も交えて「マンモス遺体から細胞核を取り出す研究チーム」を立ち上げました。

 まず、質の良い化石を見つけることから始まります。20108月、シベリアのユカギル地区の凍土からマンモス全身が見つかったというニュースが届きました。研究チームのメンバーはさっそくユカギル地区に飛んでいき、確認しました。ロシア科学アカデミーで、サンプルの採取をさせてもらい、やっとサンプル持ち出し許可が下りました。マンモス細胞の冷凍サンプルが送られてきたのは20137月でした。

 いよいよ、近畿大学での研究が始まりました。

 研究チームは、マンモスの化石から細胞の取り出しに成功しました。そして、細胞核発見までこぎつけました。そしていよいよ細胞核の分裂にとりかかったのですが・・。細胞核分裂直前までいきましたが核の分裂は起きずDNAを取り出すことは出来ませんでした。

 この研究は国際自然保護連合「種の保存委員会」で「今生きている生き物の多様性を維持すること」のみが目的となりました。

 (『よみがえれ、マンモス!』講談社より)

 

【問題2

 こんどは恐竜です。恐竜と言えばマンモスよりもっと古く6500万年前には絶滅したと言われています(鳥類は生き残っています)。

 1億年前の恐竜化石はたくさん発掘されています。あなたは、恐竜化石からも細胞は取り出せると思いますか。

 

予想

取り出せる

. 取り出せない

その他

 

恐竜化石から

 岡山理科大学の恐竜研究チームは今迄からモンゴルなどに出かけて恐竜化石の発掘を続けていました。

 ある時、「質のいい化石からならタンパク質など有機物が取り出せないか」と思いつき、研究を始めました。ハドロサウルスという草食恐竜化石についていた柔らかい組織を顕微鏡でのぞいてみました。すると・・、いくつか穴が開いています。血管の跡です。

 化石にタンパク質のコラーゲンという物質が残っていました。コラーゲンは骨を成長させた物質です。そして、わずかに残っていた細胞も取り出しアミノ酸配列まで読みとれました。

 現段階の研究はここまでです。細胞の分裂やDNAの確認には至りませんでしたが、数億年前の化石から有機物が取り出せたことに研究者は驚いています。

 

 今や、恐竜研究はたんなる分類学的な研究から生物学的な研究に進みつつあります。今後の研究が期待されています。

       (NHKスペシャル「恐竜超世界 in Japan)

 

海底の細胞

 海の中にはいろんな微生物がいます。微生物は単細胞の生き物です。プランクトンとして泳いでいます。深海には酸素はほとんどありませんが微生物は生きています。

 深海の下にある地層の中はどうでしょう。深海の下の地質は、海底のマリンスノーがゆっくり降り注いで積もってできたもので、7,8m積もるのに数百万年はかかっているそうです。

そんな深海下の地層の中にも微生物はいるのでしょうか。

 

【問題3深海の海底から10mぐらいの深さの地層には、微生物はいると思いますか。

予想

 ア いる

 イ. いない

 ウ その他

 

海底の地層

 1950年代、アメリカの研究者が太平洋の真ん中で金属の筒をつきさして、海底から下8mぐらいの地層中に生物のいることを発見しました。

 しかし、それより深い所では、微生物は見つかりませんでした。研究者たちは「栄養が少なく、数百万年も時間が経てば微生物といえども、全滅してしまうだろう。」

 と考えていました。

それから30年以上は経ちました。

 時代が進んでくると電子顕微鏡も発明され、研究者の中には、もっと深い地層の中にも微生物はいるかもしれないと考えるようになりました。

【問題4

 こうして調べた結果、深い海底の地層で、海底から何mぐらいの深さまで、微生物はいたと思いますか。

予想

 ア.  海底下100mぐらい。

 イ.  海底下1000mぐらい

 ウ.  海底下1Km以上。

海底下の深い地層

 1990年代になって、イギリスの科学者は、海底から8mの深い地層にも、単細胞の微生物がいることを見つけました。日本の研究者たちはもっと深い地層中にも微生物がいるかもしれないと思い地層を調べ出しました。

 海底下の深い地層を掘削する能力のある日本の地球深部探査船「ちきゅう」が進水しました。

 「ちきゅう」には写真のように高い櫓があり次々とパイプをつないで海底下につきさし、海底下の地層や岩石を取り出す装置があります。

 ついに2012年、日本の科学者は、水深5000mの地点で、海底下2.5Kmの地層を取り出しました。そして、その地層に微生物を見つけました。1億年も前の地層です。

 深い深い地層の中にも生命は生きていたのです。酸素にかわる他の物質でエネルギーを確保し生命を維持していたのです。

 海底下の研究はまだまだ続いています。 

 参考『生物がすむ果てはどこだ?』くもん出版 JAMSTEC        おわり