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アメリカでの対立と「仮説実験授業」

⚫︎どうしたらアメリカはまとまるか

 2021年、大統領選挙で、アメリカは2つに分断してしまいました。「人種」「宗教」「経済」など。これからどうしたらいいのでしょう。

 実は、400年前の欧米でも同様な問題が起こっていたのです。カトリックとプロテスタントとが争い、イギリスでは2つの革命が、大陸では30年戦争が起こり、フランス革命へとつながりました。

 アメリカもその時代に独立しました。その過程は、かんたんなものではありませんでした。「独立宣言」はしたものの、13州が1つにまとまるために何度も会議が開かれました。

 そして最後の最後、憲法草案をまとめるときにも議論は収まりませんでした。そんなとき、いちばんの長老だったフランクリンが演説を行います。それは名演説としてアメリカでは有名ですが、日本ではあまり知られているとはいえません。

 その部分訳は、板倉聖宣さんの『フランクリン』(仮説社1996)の中にあります。その全訳を私がしてみました。いかがでしょう。フランクリン「寛容」についての名演説

⚫︎キーワードは「寛容」

 フランクリンの演説は「お互いに寛容になろう」と説いています。「寛容」とは何か。仮説実験授業をやったことがある人ならだれでも思いつくことでしょう。

 仮説実験授業では「ア. イ. ウ.」と意見が対立することがよくあります。でもけんかにはなりません。互いの意見を「なるほど」「そういう考えもあるか」と尊重し合うからです。そして、実験結果が出れば納得します。そうした「互いに尊重しあうこと」が寛容です。

 もともと「寛容(トレランス)」という言葉は、「互いの宗教の違いを認めよう」というものです。

 板倉聖宣さんの最後の仕事は「フリーメイソン」についてでした。板倉さんはこう書いています。

 

 実はそのアメリカ独立前に、イギリスで「国の分断」が起こっていました。1600年代にカトリックとプロテスタントとが争い、2つの革命につながったのです。そんな中でも、楽しく研究したい人たちによって、1717年にフリーメイソンが創立されました。その趣旨は「〈寛容の精神〉のみなぎる会にしよう」というものでした。(板倉, 多久和,実藤「〈理性と寛容〉を目指して」『たのしい授業』2015.3月号より)

 寛容(トレランス)とは、1人1人がくりのように「かたいカラ」を持って、節度を持って討論すること。言いたいだけ言うのではなく、他人の意見も聞くこと。

  寛容の反対は、差別(ディスくりミネーション)。


 ぜひ、「フランクリンの寛容についての名演説」を読んでみてください。

    フランクリン「寛容」についての名演説