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真実ってなあに。(その2、民主主義とは何か)

●今のアメリカ・仮説実験授業・「民主主義」

 「民主的」とか「民主主義」とか、何となくむずかしそうです。でも教師をしていた私には思い当たることがあります。「仮説実験授業」です。

 問題→予想→討論→実験

〈ものとその重さ〉の「問題」の例です。

    人間の体重は、食事後どうなるか

     ア.  もとのまま

     イ.  食べた分だけ重くなる

     ウ.  少しだけ体重が増える

 意見は「討論」のところで言います。「実験」の後に意見を言ってはいけません。「じゃんけん」でいえば「後出し」になります。

 ところが、トランプのやり方は「後出しじゃんけん」ようです。

選挙という実験が済んでから「不正があった」とか「自分の票を増やせ」とか言っています。それはルール違反です。

 

 この「問題→予想→討論→実験」こそ、「民主的」な過程だ、と私は思います。いかがでしょう。

 


●古代ギリシャ都市国家の民主制

 古代ギリシャでは「国民が直接政治に参加する」直接民主制が行われました。「議題」を「討論」して「採決」するのです。意見は採決前に言わなければなりません。アメリカ大統領選挙は、全員が投票するのですから、直接民主制に似た部分があります。

 

 「民主主義」のことを「デモクラシー」といいます。実は政治形態は3つあります。

  「デモクラシー」「アリストクラシー」「モナーキー」

   多数者支配    少数支配     一人支配

 3つの形態はハリントン(1611-1677)の『オシアナ共和国』に書かれているものです。


田中浩『近代国家と個人(NHK市民大学)』1989.7.1 には、右のような絵が掲載されています。

 この3つの政治形態は、「デモクラシーがいちばんいい」というわけではありません。「開発独裁」といって、独立まもない国は、強力なリーダーが現れることがあります。逆に「アラブの春」(2010-12)の運動のように、市民が「政権」を倒したことで、かえって国が混乱してしまった例もあります。「何をするのも仮説実験」なのです。

 


 アメリカはもともと民主主義(デモクラシー)の国です。『独立宣言』には「すべての人間は平等につくられている」と書かれています。でも国内には「貧富の差」「人種の差」など、「平等」といえない状況があり、それを受けてトランプが大統領になったのです。「ある一部の層を代表している」のですから、もともと「民主主義(=国民一人一人に政治を行う)」とは、そぐわないのです。

 

 実はそのアメリカ独立前に、イギリスで「国の分断」が起こっていました。1600年代にカトリックとプロテスタントとが争い、2つの革命につながったのです。そんな中でも、楽しく研究したい人たちによって、1717年にフリーメイソンが創立されました。その趣旨は「〈寛容の精神〉のみなぎる会にしよう」というものでした。(板倉, 多久和,実藤「〈理性と寛容〉を目指して」『たのしい授業』2015.3月号より)

 

 もう一度、板倉聖宣さんの言葉です。

 

科学は、民主的な社会にのみ生まれ、民主的な社会を守り育てる

 

 バイデン新大統領は「癒し」という言葉を使って国民に訴えました。アメリカは、もう一度、民主主義の原点にかえって、政治が始められることでしょう。        「寛容(tolerance)」の語源は「耐える」ということ→