· 

「即席ラーメン」の発明は「バッタモン」に対抗できるか

⚫︎「仮説実験授業」の発明と「模倣」

 朝ドラ「まんぷく」(2018年10月〜, 再放送2023年10月〜)の中で「ラーメンを発明直後に,バッタもん(*1)攻撃を受ける」という場面が出てきます。

 そういった「模倣と創造」を〈ものとその所有〉の観点で見たらどうなるでしょう。

 仮説実験授業も,よく真似されます。〈ものとその重さ〉の体重計に乗る問題なら,教科書にも載るようになりました。どうしたらいいのでしょう。

 

 以前,板倉さんから聞いた話です。

「完璧に作ったものは真似できない」

 つまり,〈ものとその重さ〉の1つの問題は真似できても,授業書全体は簡単には真似できないということです。ある人は「出る釘は打たれる/出すぎた釘は打たれない」と言っていました。

 そういえば,トヨタ自動車は,プリウスとかミライとか作っています。それは,なかなか真似されません。それに反して,パナソニックなどの白物家電は中国に真似されて,今や日本の家電産業は風前の灯です。トヨタも電気自動車を未だ主流にしていません(2024年現在)が,「全固体電池を含んだ真似されないモデルを作ろう」とする方向をめざしているのかもしれません。

 

「日清食品」のチキンラーメンは,どうなるのでしょう。バッタもんに勝てるのでしょうか。後発の「サンヨー食品」はサッポロ一番で,体系的に真似して生き残っています。今や「即席麺」という文化は,世界中に普及しています。ちゃんと真似すること(発明者を尊重しつつ)が大切なのではないでしょうか。

 「文化は,[囲い込み][共的世界の創造]の2つがせめぎあっている」(山田2021*2)」といいます。つまり,「[所有]と[拡散]との相入れない2つの側面がある」のです。

 

 これからの「まんぷく」が楽しみです。「バッタもん」にどう対抗していくのでしょう。

 

      *1 バッタもん「バタバタと倒産した商品を売る店を[バッタ屋]と言ったことが語源」

  *山田奨治『著作権は文化を発展させるのか: 人権と文化コモンズ』(2021.人文書院)