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引用文献などの表記法について

⚫︎1 あなたは、「文献の引用の仕方」を守っていますか

 仮説実験授業研究会の会員が書く文章には、役に立つ文献がたくさんある。しかし、しばしば私は困惑してしまう。

 たとえばAさんが板倉さんを思い浮かべて文章を書いたとする。その文章が、板倉さんのものなのかAさんのものなのかが、わからないのだ。わからないから、私はAさんの文章を引用することができない。

 

 板倉聖宣『模倣と創造』(仮説社,1978)には、同様な問題が書かれている。

 

 他人の文章を引用するというのは、「どこからどこまでがだれのどんな著作物からの引用文である」と

 いうことが、読者にはっきりとわかるように明示して、他人の文章を借りうけることである。(35ぺ)

      (以下、緑色はすべて板倉さんの文章)

 Aさんは、せっかくいい文章を書いても、引用表記が不明瞭で、他の人に使ってもらえない。そこで、以下「引用文献の表記法」について、『模倣と創造』に基づいて具体的に書いていく。

(私は、大学院で修士論文を書いたとき、「文献の引用法」について、いやになるほど何度も直され、教わった。その方法は、基本的には板倉が『模倣と創造』に書いていることと同じである。)

 

⚫︎引用の3つのカテゴリー(『模倣と創造』27ぺ)

 いわゆる引用(言及)には、大きくいって三つのものがあると思う。

 (1)文章そのものの引用

 (2)特定の発見・アイデアの引用  

 (3)問題意識・思想・見識の引用、協力関係の明示

「(1)文章そのものの引用」の3つの仕方

  ①「  」で囲う(短い場合)

  ②行替えして、1段落とす(長い場合)

  ③要約した場合は、②をした上で「要約」を明示

     「(2)(3)の場合も、③のようにその旨を明示する。短い場合は〈 〉でくくる。

  ④一般的に知られていることは、引用を明示しなくても良い。

   たとえばある国語辞典で「エコ」とひくと「エコロジー」と出てきた。そういう場合。

 板倉も「仮説について、まず第一に注意すべきことは、仮説とドグマの区別である」(板倉1966a:1969

 p.268)と述べており..............

          ●板倉(1996a)「仮説とは何か」『教育』3月号、国土社,『科学と方法』(季節社,1969)に再録。

 

⚫︎「文献名の書き方」は、学会ごとに少しずつ違うが、基本的にはみな同じ

(1)板倉流

 例1: 板倉聖宣「創造性の心理学」『模倣と創造』仮説社、1971 p.153-204

                             板倉さんは「153ぺ」と書くこともある。

(2)井藤が大学院で習った書き方

 例1-1:板倉聖宣(1971)「創造性の心理学」『模倣と創造』仮説社、1971 pp.153-204

 例2小野健司(2007)「近代教育学における〈仮説実験的認識論〉の系譜(1)」『四国大学紀要 人文・社

    会科学編』 第28号 pp.77-86

   [年(1971)を先に書く方法は、二度目に引用するとき「板倉(1971)」と簡略化できる]

(欧文の場合)

 Nidditch, Peter Harold (1968)The philosophy of science  Oxford University Press Oxford  p.4

 

 (ネットで、「文献の引用」と検索すると、いろいろ出てくる。理系と文系で表記法がかなり違う)

 

⚫︎引用明示は、自分のため

 「堅苦しいことを言うな」という意見もあるかもしれない。そうではない。まず自分のためなのだ。引用法があいまいだと自分が困るのだ。つまり、あとで見直したり、書き直したりするとき、だれの文献をどこから引用したかがはっきり書いてないと、自分が困るのだ。だから私は、引用したページ(pp.153-204など)もできるだけしっかり書くことにしている。

 自分のために引用元を記しておけば、他人が使ってくれるときにも同様に役立つ。

 

(ここまで書いてきて思うのは、やはり「引用法」というものは具体的に文章を書く中で学んでいくもののようである。ぜひ『模倣と創造』を読んで実践してほしい。後は、サークルなどで機会があれば、直接説明したい。ご意見があればお聞かせ願いたい)