私の友人平田さんはピアノが弾ける。彼は、楽譜が読めない。なぜ弾けるのか。
コードを使っているのだ。ウクレレの得意な彼は、それをピアノに応用して弾いている。
ふつうピアノというと、楽譜を読みながら演奏する。それなのに彼はなんとなく弾いてしまうのだ。
きっとそれは「脳の記憶のメカニズム」が関係しているのではないだろうか。解明してみよう。
NHKスペシャル『人体』「第5集 “脳”すごいぞ!ひらめきと記憶の正体」(2018年2月4日放送)は、脳科学で「どうやって人は記憶するか」を解き明かしている。👉『人体』
「スーパーリコグナイザー」という人がいる。「一度見た顔は忘れない」という人で、ロンドンの街で、犯罪者を探している。CTスキャンを使って、その人の脳を見てみると...。
まず、目からの信号は「海馬」の中の「歯状回」に送られる。そのときに記憶ごとに1つずつ、新しい回路を作っていく。そして、ほぼ同時に大脳資質にその記憶は運ばれて固定される。
そういえば、私も同様な方法を使っていた。教師をしていたのだが、名前を覚えるのが得意だった。どうやって覚えていたか。
まず顔を見たら「イメージ」を描く。その次に名前と顔のイメージとつなげる。たとえば「栗田」さんなら「栗みたいな顔だな」「ぽっちゃりしていて目がくりみたいだな」と。
教育学で同様なことを言っている人がいる。板倉聖宣である。「何をするにも仮説実験」と彼は言う。
●出だしの論理●
よく「科学的に考えるには、なぜ・どうしてと考える習慣をつけるといい」などといいますが、それよりも「いつも予想をたてながら生きていく」というほうが効果的です。.....これは「何をするにも仮説実験」ともいえます。
板倉聖宣著『発想法かるた』(仮説社 1992)より
楽譜なして楽しくピアノを演奏している平田さんも、同様ではないだろうか。まずは「歯状回」にイメージを作る。それをくりかえしながら弾いている。大脳皮質を使って楽譜を読んでいるのではない。まさに「たのしい音楽」だ。
私は「何をするにも仮説実験」という言葉が好きだ。歩いていても、テレビを見ていても、脳の奥の方にイメージを作りながら生きている。そんなことをしている毎日は、ほんわかしていて、気持ちがいい。