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「集団免疫2%仮説」は明らかに外れだった。

●トランプは「コロナは消え去る」と言った。

 アメリカ大統領選で、トランプは負けた。「コロナに負けた」と言ってもいいだろう。

 トランプの主張は、「集団免疫が成立してパンデミックが終了する」というものだった。

私は、かつて「集団免疫はいつ成立するか」2020.9.5をこのブログに掲載した。その中で次のように書いた。

 

 アメリカ大統領選挙はどうなるか

アメリカは7月末に「集団免疫」を迎えたように見える。今後、どうなるだろう。パンデミックは、11月3日の大統領選にはどうなっているだろうか。これからのグラフの動きに注目していきたい。

 実際はどうだっただろうか。

 左のグラフを見ると、結果は明らかに」であった。

 

 9月以降、増加を続け、アメリカ大統領選のあった11月3日は、急激な増加のまっただなかであった。12月に入りピークを迎えたようにも見えるが、どうだろう。

● 抗体保有率が20%を越えると「集団免疫」は成立したか

 一般的には「コロナウイルスの場合、流行を止めるには60%の人が免疫を保持すること」と言われている。

 宮坂昌之さん(大阪大学免疫学フロンティア研究センター)はそれに異議を唱える。「(集団免疫は)たぶんよくて20%だ」という(宮坂さんは16.7%という数字を出す https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200516-00178807/ )。どちらが正しかったのだろう。

ニューヨーク州の新規感染者数のグラフは4月上旬にピークを迎えた。その当時、その地域住民の抗体保有率は20%ほどであった。

 これは20%説によると「集団免疫が成立した」と言えそうだが、どうだったであろうか。

 

 2020年11月頃から、ニューヨーク州は、第2派が訪れて大変なことになっている。

「集団免疫」は4月に成立していなかったのだろうか。ニューヨークは大都会で、周辺から日々、人々の移動してきて、閉じた地域ではないので、何とも言えない。ただ「コロナパンデミックが終わっていなかった」ことだけはたしかである。

 

 スエーデンも同様である。新規感染者数は、6月末に一時ピークに達したように見えたが、12月になっても再度増加を続けている。

 

 

 

 

●「感染者数が2%を越えたら集団免疫は成立する」という仮説の成否は?

 私は、「累計感染者率が2%を越えたら、集団免疫が成立して増加は止まる」という仮説を立てた。

 8月の時点で、チリ、ブラジル、アメリカが2%を越えており、もう増加を続けることはない、と予想したのである。

 その予想は、明らかにまちがいだった。

新規感染者数は、チリでは増加が止まったもの

のブラジルでは11月から再度増加に転じている。

 

 

 

 2%という数値は、大陸別で見ても、12月ですでに南北アメリカ、ヨーロッパで越えている。

 あきらかに「累計感染者率2%で集団免疫が成立する」という仮説がはずれたことはまちがいない。

 

 


 多くの欧米諸国で、累計感染者数が2%を越えている。特にアメリカは5%に迫ろうとしている。いったいいつになったら、感染者数のグラフ増加は止まるのか。

 12月上旬現在、日本の累計感染者数は0.1%程。それは「新幹線1編成に1人、感染経験者がいる」というイメージでいいだろう。


●どうして感染症の流行には、いくつかの波が来るのか

「感染の3つのシナリオ」という記事がある。(篠原拓也「新型コロナ 第2波襲来の脅威-第1波を上回る大波は来るのか?」ニッセイ基礎研究所 2020.6.23 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64770?site=nli 2020.12.3閲覧)

 そこには右のグラフ(ミネソタ大学の研究者による)が掲載されていた。過去の感染症流行から作成したものである。

 3つのグラフのどれもが波を打っている。1回の波で終わりではない。まるで津波のようである。どうして、何回も波が来るのか。

 日本では、すでも3つの波が到来している。「行動制限」によって波を収束に向けたが、第3波では政府は「行動制限」の実施に躊躇している。

 

●「集団免疫」をあてにするのは不道徳

 WHOのテドロス事務総長は、2020年10月12日に、次のように語った。

 

「集団免疫をあてにするのは科学的にも倫理的にも問題がある」

また

「歴史上、病気の発生や世界的流行の対策として、使われたことはない」BBCニュースジャパン』2020.12.3閲覧 https://www.bbc.com/japanese/54519591

 

 たしかに、1660年にロンドンでペストが大流行したときにも、多くの人は他地域に避難している。それが契機となって「王認学会(Royol Society)」も創立された。

 

 今度、どうなっていくだろう。集団免疫成立は、はたして60%なのか20%なのか。それはワクチン接種が進展しればわかっていくことに違いない。

(掲載したグラフは、筆者がすべて作成した。データは、worldometerからのものである。

https://www.worldometers.info/coronavirus/?