プロ野球の日本シリーズはセリーグの代表チームとパリーグの代表チームが日本一を目指して戦います。先に4勝したほうが優勝です。(どちらかが4勝したら終了です。)
優勝が決まるのは(引き分けはないとして)
A 4勝0敗 B 4勝1敗 C 4勝2敗 D 4勝3敗
のいずれかです。
[問題1]
過去72年間の対戦で、勝敗の結果は、上のA,B,C,Dのどれがいちばん多いでしょう。
右のグラフを見てください。実際の勝敗結果です。多い順に
「4勝2敗」→「4勝3敗」→「4勝1敗」→「4勝0敗」
もし、これを数学の確率の計算をすると、どうなるでしょう。勝負する2チームの実力は同じとします。つまり「2人でじゃんけんして、1人が4回勝ったら終わり」と同じです。
[問題2]
数学で計算すると
ア. 実際の結果と同じで、「4勝2敗」がいちばん多くなる。
イ. 実際の結果とは同じにならない。
数学での結果は、実際とは少し違います(実際は0-4, 1-4, 2-4, 3-4の場合もあるので数字は2倍になります)。「4勝2敗」と「4勝3敗」とが同じになりました。やはり「2チームに差がある」のでしょうか。あるいは「選手が疲れる」のでしょうか。
それでは、これはどういう「数学」を使って求めたのでしょう。「もう少し付き合ってもいい」と思われたら、次を見てください。
板倉聖宣さんは「数学とはイメージを描いて想像すること」「創造すること」と言っています。そこで
ともかく「イメージを描く」ために、excelを使って、起こりうるパターンを書き上げてみました。
このうち4勝0敗は、4回試合をするので、起こる確率は 1/2×1/2×1/2×1/2=1/16
4勝1敗は、5回試合をするので、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32 4回起きるので 4/32=1/8
4勝2敗は、6回試合をするので、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/64 10回起きるので 10/64=5/32
4勝3敗は、7回試合をするので、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/128 20回起きるので 20/128=5/32
いかがですか。「こんなめんどくさいことはイヤだ」と思った人には、エレガントな求め方があります。「本当に、[4勝2敗]と[4勝3敗]の確率が同じになるか」を求めます。
(解法)
4勝3敗、または、4勝2敗になるためには、
3勝2敗という場面が必ずあります。どちらかのチームが3勝を取るのです。その場合
次の試合で
(ア)3勝のチームが勝てば4勝2敗で終了です。
(イ)3勝のチームが負ければ3勝3敗となりますが、その次の試合で
どちらのチームが勝っても4勝3敗で終了です。
そして、(ア)の起きる確率は1/2
(イ) の起きる確率は1/2
ですので、4勝2敗と4勝3敗は同じ確率で起きることになります。
いかがでしたか。「数学がますますきらいになった」、いや「数学はけっこうおもしろい」、いろいろな感想が聞こえてきそうです。
いずれにしても、「計算するのが数学」と思わずに、「まずイメージを描くこと」と思えば、もう少し「数学と仲良くなれる」かもしれません。
私たち(猪塚と井藤)は、月に1回、数学のゼミをしています。毎回、イメージ、妄想を描いているのです。ごいっしょにいかがですか?